マンション管理組合の不正経理問題
マンションを購入すると、そのマンションの区分所有者になり、自動的に管理組合のメンバーとなります。その共同体の運営に参加することになります。
そして、その管理組合のメンバーから理事を選任するのですが、一般的に多くのマンション管理組合の理事は管理規約により2年の任期で区分所有者が輪番で担うように定められています。
しかし、管理組合の活動に無関心な人が多く、仕事が忙しい等の理由で引き受ける人が少ないために2年の任期を延長するなどして役員が長期化または固定化する場合も少なくありません。
管理組合の理事は大きなお金を扱う立場
しかし、管理組合の理事は大きなお金を扱う立場でもあります。
仮に、100戸が入居するマンションで、修繕積立費、管理費がそれぞれ月1万円とした場合、それぞれ毎月100万円、年間で1200万円になり、両方合わせると年間2400万円を管理組合が管理することになります。
管理組合の業務は、管理会社に業務委託している場合がほとんどですが修繕や設備関係の購入、修理、備品の購入など支払い項目は多岐に渡り、そのほとんどを管理組合が決裁しています。
管理組合の理事が長期化して、なおかつ区分所有者に無関心な方が多いと、使途不明金の発生や、管理会社や業者と癒着して割高な工事費や購入代金を支払い、リベートを受け取るなどの不正経理問題の発生は決して珍しいことではありません。
マンションで総会を開いても、出席する区分所有者は少なく、多くの人が議長一任の委任状か議決権行使書をあらかじめ提出するという状態で、議長を務める理事長は事実上議案の議決権を握っていると言っても過言ではありません。
実際の例として147戸が入居するマンションで2021年に行われた総会では、出席者12名、委任状27名、議決権行使98名でした。コロナ禍の影響も否めませんが出席者は少なく、しかも出席者12名の内訳は理事10名と他2名という状況でした。
今のシステムでは理事長になりさえすれば、管理組合の運営はほぼ思いのまま
残念ながら、今のシステムでは理事長になりさえすれば、管理組合の運営はほぼ思いのままにでき、しかも理事長に理事会を支配できる力があれば絶対的な権力を手にすることができる仕組みなのです。
例えば大規模マンションの管理組合で実権を握ると、場合によっては年間1億円単位の管理費予算の使い方や、十数年に一度巡ってくる数億円規模の大規模修繕工事をどのように行うかを決めることができます。
これは明らかな利権で、住民が無関心で理事のメンバーや理事長が長期化してくると、場合によっては大きな不正が発生する可能性があるのです。
マンション管理組合で不正会計が起きないようにするには、区分所有者ひとり一人が管理組合の活動に興味を持ち我が事としてチェックすることが重要です。
月次報告書や収支決算・予算といった書類の開示と共有化は当然ですが、支出の内訳まで具体的な説明を求めて、必要性や金額の妥当性などをチェックし、疑問があれば総会に出席して質問をすることが不正を未然に防ぐために重要です。住民の意識が高まるほど、管理会社や理事たちも不正をしにくい環境になります。