マンション管理組合必見! ベランダでの喫煙問題
(2022年4月1日現在の法令に基づいて解説しています)
多くの人が一つ屋根の下で生活するマンションは、騒音問題や迷惑駐車など様々な原因でトラブルになる可能性をはらんでいます。
隣人のベランダでの喫煙
隣人のベランダでの喫煙による、タバコの煙や臭いの問題があります。
具体的には、隣人がベランダで喫煙することにより洗濯物に臭いが付着する。
24時間換気により室内に煙や臭いが入る。
開けている窓から煙や臭いが入ってくる。
といった被害を管理組合に訴えるケースがあります。
多くの場合、どの部屋の人がタバコを吸っているか分かっていても付き合いを考えて注意できずに、困って管理人や管理組合に相談してきます。
住民から喫煙被害の訴えがあった時の管理組合としての対応を考えてみました。
名古屋地方裁判所で下された判決
2012年12月に名古屋地方裁判所で下された判決です。
マンションのある階に住む住人がベランダで喫煙を続け、上の階の住人が受動喫煙による体調悪化を理由に訴訟を起こしました。
再三の注意を受けたにも関わらずベランダでの喫煙を続けた経緯なども考慮され、不法行為として認められました。
ベランダでの喫煙を禁止する
この判決が出たからと言って、ベランダでの喫煙が違法となった訳ではありません。
この判決を根拠として管理規約に「ベランダでの喫煙を禁止する」内容を盛り込むマンションが増えているようです。
管理組合として対応する第一段階としては
住民から喫煙による迷惑被害の訴えがあった場合、管理組合として対応する第一段階としては管理会社と相談すること。
その上で、ベランダ(共用部分)での喫煙により煙や臭いで被害を訴えている住民がいるので十分な配慮をお願いする文章を掲示板または各戸にポスティングするなどして問題の周知を図ります。その上でなかなか改善が見られないようであれば管理規約の改正を検討しましょう。
管理規約の改正は特別決議
管理規約の改正は特別決議にあたり、以下の手順で行います。
- 理事会、専門委員会での検討
必要に応じて管理規約変更のための専門委員会の立ち上げ
- 住民説明会の開催
- 総会での決議
管理規約の変更の場合は総会での特別決議 (3/4の賛成) が必要
- 規約原本の作成
新しい管理規約を全組合員へ配布
5、広報
賃借人などにも掲示板などを利用してお知らせする。
手間のかかるプロセスを踏まなければいけません。
しっかりと入念な手続きにより進めていくことが大切です。
それにより多くの住民の合意を得ることができます。特別決議として必要な3/4以上の賛成を得る可能性が高くなります。
マンション標準運管理規約
「マンション標準運管理規約」を参考に住民の総意に基づいて作られます。
共用部分の範囲として『 エントランスホール、(中略)、バルコニー等専有部分に属さない「建物の部分」』と書かれています。
各戸のベランダは住民が専用使用できることになっています。
火災等の緊急時には廊下等と同じように避難経路として使う構造が多いです。
法律の上では不法行為となる可能性
こうした状況もあり、標準管理規約ではベランダでの喫煙を制限するように管理規約を改正しやすい形に既になっていると言えます。
最後になりますが、管理規約にベランダでの喫煙禁止が明記されていなくても、法律の上では不法行為となる可能性があります。それは、民法第709条に、次のように明記されているからです。
【不法行為による損害賠償】
『 第709条故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。』 とあります。
損害賠償の責任を負うことになる可能性
この「他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者」の解釈として、喫煙による健康被害が発生した場合にも該当すると考えられます。
一つ一つの裁判における裁判官の判断にもよります。
故意ではなく過失であってもベランダ喫煙により第三者への健康被害が発生した場合には損害賠償の責任を負うことになる可能性があるということです。